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『行政の管理栄養士って、保健所で何をしているの?』『市役所の管理栄養士とは違うの?』と気になっている方も多いですよね。病院や給食の仕事に比べると、外から見えにくい仕事です。
結論から言うと、行政栄養士は、都道府県や市町村などの自治体で、住民の食と栄養を支える管理栄養士・栄養士です。都道府県と保健所、市町村で受け持つ仕事がはっきり分かれているのが特徴です。
この記事を読めば、行政栄養士の仕事内容と、働く場所ごとの役割の違い、なるまでの道筋が分かります。
行政栄養士とは?自治体で住民の食を支える管理栄養士
行政栄養士とは、自治体で地域の住民に対する栄養指導などに携わる管理栄養士などのことです。厚生労働省は、行政栄養士の仕事の進め方を「基本指針」として示しています。
厚生労働省の以前の指針(平成20年)では、行政栄養士を「地方公共団体において地域住民に対する栄養指導等に従事する管理栄養士等」としていました。つまり、自治体で働き、住民の食と栄養を支えるのが行政の管理栄養士なんです。
今の仕事の土台になっているのが、平成25年3月29日に厚生労働省が示した「地域における行政栄養士による健康づくり及び栄養・食生活の改善の基本指針」です。都道府県、保健所設置市・特別区、市町村の3つに分けて、取り組む内容が書かれています。
指針はどんな位置づけ?
この指針は、健康日本21(第二次)を進めるにあたって定められたもので、国から自治体への技術的な助言という位置づけです。都道府県・保健所設置市・特別区の担当部局あてに通知されました。
これにより、平成20年の以前の指針は廃止されています。2026年10月時点で、この平成25年の指針を置きかえる新しい指針は確かめられませんでした。最新の情報は厚生労働省の公表で確かめてみてください。
指針に書かれている5つの柱
3つの自治体の区分には、共通して次の5つの柱が立てられています。
- 組織体制の整備
- 健康・栄養課題をはっきりさせ、PDCAサイクルで施策を進める
- 健診などをもとにした予防の取り組みを進める
- 社会生活を自分で営むための機能を保つ取り組みを進める
- 食を通じた社会環境を整える
『PDCAって、会社の言葉じゃないの?』と思った方もいるかもしれませんね。行政栄養士は、地域の課題を見つけて、計画を立て、実行して、結果を確かめる流れで仕事を進めます。
行政で働く管理栄養士は何人くらい?
令和5年度末の時点で、保健所と市区町村の地域保健の仕事に関わる常勤の管理栄養士は3,929人でした。同じ表では、常勤の栄養士は304人です。
地域保健の仕事に関わる常勤職員の数です。非常勤の人や、学校など別の部署で働く人はふくまれていません。
都道府県・保健所・市町村の役割分担表
都道府県と保健所は、給食施設への指導や人材の育成など広い範囲の仕組みづくりを受け持ちます。市町村は、健診や栄養指導、母子や高齢の方の支援など、住民に近い仕事が中心です。
ここが、行政の管理栄養士を理解する一番のポイントです。指針の内容を、働く場所ごとに表にしてみました。
| 取り組み | 都道府県(本庁・保健所) | 市町村 |
|---|---|---|
| 特定給食施設への指導・支援 | 受け持つ | 指針の項目にはない |
| 飲食店のヘルシーメニューの普及 | 受け持つ | 指針の項目にはない |
| 地域の栄養ケアの拠点づくり | 受け持つ | 指針の項目にはない |
| 管理栄養士・栄養士の育成 | 受け持つ | 受け持つ |
| 健診データをもとにした課題の把握 | 市町村との協働の体制をつくる | 受け持つ |
| 住民への栄養指導 | 指針の項目にはない | 受け持つ |
| 妊娠中・子ども・高齢の方の食の支援 | 指針の項目にはない | 受け持つ |
| 食育のネットワークづくり | 食に関するいろいろな分野の施策を進める | 受け持つ |
| 災害などの健康危機への備え | 受け持つ | 受け持つ |
保健所設置市と特別区は、都道府県と同じように特定給食施設への指導・支援や、飲食店のヘルシーメニューの普及などを受け持ちます。課ごとに行政栄養士がいる場合は、情報を集めて共有する体制をつくることも求められています。

『保健所設置市って何?』と思いますよね。名前のとおり保健所を置いている市のことで、指針では東京23区の特別区と並べて書かれています。保健所の役割を持つので、都道府県と同じく給食施設の指導なども受け持つんです。
指針の項目から見える違い
特定給食施設への指導や飲食店のヘルシーメニューの普及は、都道府県と保健所設置市・特別区の項目に置かれ、市町村の項目にはありません。反対に、市町村は住民に身近な健診や栄養指導、母子や高齢の方への取り組み、食育が中心です。
例えば、同じ県の中でも、保健所の管理栄養士は管内の病院や学校の給食施設を回り、市町村の管理栄養士は乳幼児健診で保護者の相談にのる、というように分担しています。
本庁と保健所の人数
指針の本文には、本庁で働く行政栄養士は1都道府県あたり平均2〜3名と少なく、保健所などでは平均14名という記述があります(平成25年時点)。本庁は少ない人数で、都道府県全体の計画づくりを受け持っています。
保健所の管理栄養士の仕事
保健所の管理栄養士は、特定給食施設への指導・支援や、飲食店と一緒に進める食環境づくり、災害への備えなどを受け持ちます。住民一人ひとりより、施設や地域全体を相手にする仕事が多いのが特徴です。
保健所の管理栄養士の仕事を、指針に書かれた都道府県の取り組みからまとめてみます。
| 仕事 | 内容 |
|---|---|
| 特定給食施設への指導・支援 | 栄養管理の状況を把握・評価し、指導や支援を行う |
| ヘルシーメニューの普及 | 飲食店が健康に配慮したメニューを出せるよう進める |
| 地域の栄養ケアの拠点づくり | 地域で栄養の支援を受けられる拠点を整える |
| 管理栄養士・栄養士の育成 | 保健・医療・福祉・介護の現場で働く人を育てる |
| 健康危機管理 | 災害などの健康危機への備え |
特定給食施設への指導
特定給食施設は、継続的に1回100食以上か1日250食以上の食事を出す施設です。令和6年度末の時点で、特定給食施設は50,860施設ありました。
種類別に見ると、学校が15,310施設で最も多く、児童福祉施設が14,436施設、病院が5,458施設と続きます。保健所の管理栄養士は、こうした施設の栄養管理の状況を把握して、指導や支援をしています。
指針では、栄養表示された食品の検査や収去は「食品衛生監視員の業務として行うもの」とはっきり書かれています。行政栄養士の仕事と混ぜないようにしておきましょう。
飲食店と進める食環境づくり
保健所の管理栄養士は、飲食店が健康に配慮したメニューを出せるように働きかける役割も持っています。住民が外食やお弁当を選ぶ時に、自然と栄養のバランスがとれる環境をつくる仕事です。
『一人ひとりに指導するより、お店のメニューが変わるほうが多くの人に届く』と考えると、この仕事の大きさが分かりますよね。
現場で働く人を育てる
指針では、保健・医療・福祉・介護の現場で働く管理栄養士・栄養士の育成も、都道府県の役割として挙げられています。研修の企画などを通じて、地域の現場の力を底上げする仕事です。
災害への備え
指針では、災害などの健康危機に備えて、都道府県の地域防災計画に栄養・食生活の支援を位置づけるよう調整することが書かれています。
『災害の時にも管理栄養士の出番があるんだ』と意外に思った方もいるはずです。避難した人の食事をどう支えるかを、ふだんから計画しておくのも行政の大事な仕事なんです。
市町村の管理栄養士の仕事
市町村の管理栄養士は、健診の結果をもとにした栄養指導や、妊娠中から子ども、高齢の方までの食の支援、食育のネットワークづくりを受け持ちます。住民と直接話す機会が多いのが特徴です。
市町村の行政の管理栄養士は、住民一人ひとりの暮らしに寄りそう仕事が中心です。指針に書かれた市町村の取り組みを見てみましょう。
健診の結果をもとにした栄養指導
市町村では、健診の結果などを分析して優先する課題をはっきりさせ、数値の目標を立ててPDCAで進めることが求められています。
栄養指導は「対象者が代謝等の身体のメカニズムと食習慣との関係を理解し、食習慣の改善を自らが選択し、行動変容につなげるように進めること」とされています。管理栄養士が一方的に教えるのではなく、住民が自分で選べるように支えるのがポイントです。
例えば、相談の場面ではこんなやりとりになります。
「夜遅くに食べることが多くて、なかなか変えられなくて」
「お仕事で遅くなる日もありますよね。まずは、どの日なら早めに食べられそうか一緒に考えてみませんか」
保健指導の流れは、特定保健指導と管理栄養士|指導の流れと関わり方で紹介しています。
1つの相談から地域の取り組みへ
市町村の管理栄養士の仕事は、目の前の相談だけで終わりません。相談や健診で見えたことを集めて、地域全体の取り組みにつなげていきます。
- 健診や相談の記録から、多い悩みや傾向をつかむ
- 優先して取り組む課題を決め、目標を立てる
- 教室や相談会、広報などの取り組みを計画して実行する
- 次の健診や相談の記録で、変化を確かめる
- 結果をもとに、次の年の計画を見直す
例えば、乳幼児健診で「離乳食の進め方が分からない」という相談が多いと分かれば、保護者向けの教室を計画する、といった流れです。

子どもと高齢の方の食を支える
次の世代については、乳幼児健診のデータの集計や分析、妊娠前のやせや低栄養など防げる要因への取り組みが挙げられています。児童・生徒については、教育委員会や家庭、学校と連携して取り組みます。
高齢の方については、低栄養の傾向にある人の実態をつかみ、地域包括ケアの体制の中で多職種と連携することが求められています。
食育のネットワークづくり
市町村では、食育を進めるネットワークづくりも大事な仕事です。食生活改善推進員などのボランティアの組織を育てることも、指針に書かれています。
市町村の保健センターでの仕事は、保健センターの管理栄養士|母子・成人の栄養相談の仕事で詳しく紹介しています。
| 対象 | 市町村の管理栄養士の取り組みの例 |
|---|---|
| 妊娠中・子ども | 乳幼児健診のデータの分析、保護者への相談 |
| 働く世代 | 健診の結果をもとにした栄養指導 |
| 高齢の方 | 低栄養の傾向にある人の把握、多職種との連携 |
| 地域全体 | 食育のネットワークづくり、ボランティアの育成 |
行政の管理栄養士になるには
行政の管理栄養士になるには、都道府県や市区町村が行う栄養士の区分の採用試験や選考に合格します。免許の要件は自治体ごとに違うので、受けたい自治体の案内を毎年確かめましょう。
行政の管理栄養士は、自治体の職員として採用されます。採用の例を見てみましょう。
| 自治体・区分(年度) | 職務・配属先の例 | 免許の要件 |
|---|---|---|
| 東京都 Ⅰ類B 栄養士(令和7年度) | 都保健所、療育センター、学校等 | 栄養士の免許(管理栄養士も可) |
| 大阪府 栄養士職(令和8年度) | 本庁、保健所、社会福祉施設等 | 管理栄養士の免許、または取得見込み |
| 横浜市 栄養士(令和8年度) | 区役所(福祉保健センター)など | 管理栄養士の免許(取得見込みを含む) |
| 江戸川区 栄養士1類(令和8年度) | 保健所・健康サポートセンター、公立学校、公立保育園 | 管理栄養士の免許(取得見込みを含む) |

『栄養士の免許だけでも目指せる?』と気になる方もいますよね。東京都のように栄養士の免許で受けられる試験もありますが、管理栄養士の免許を要件にしている自治体もあります。
試験の内容と対策は管理栄養士の公務員試験|試験内容と対策の進め方で、公務員の管理栄養士の働く場所の全体像は管理栄養士の公務員|行政・学校・自衛隊など働く場所と仕事で紹介しています。
栄養士ガイド
栄養士・管理栄養士の学校や講座を比べたい方へ
栄養士・管理栄養士をめざす道は、大学・短大・専門学校(養成施設)の選び方で大きく変わります。働きながら管理栄養士国家試験をめざす人には、試験対策の講座という選択肢もあります。気になる学校や講座の資料を取り寄せて、実習や国家試験の支え方、通いやすさを同じ物差しで見比べるのが近道です。比べ方のポイントをまとめました。
無料学校・講座の資料請求と比べ方を見る栄養士の免許につながるのは、都道府県知事などが指定した養成施設です。指定の有無は学校の案内や公的機関の情報で確認できます。
保健所と市町村、どちらを目指す?
同じ行政の管理栄養士でも、保健所と市町村では毎日向き合う相手が違います。どちらに惹かれるか、比べてみてください。
| 比べる点 | 保健所(都道府県など)が合いそうな人 | 市町村が合いそうな人 |
|---|---|---|
| 向き合いたい相手 | 給食施設や飲食店など、施設を相手に仕組みを整えたい | 住民一人ひとりと直接話して相談にのりたい |
| 関わりたい人 | 地域の現場で働く管理栄養士・栄養士を育てたい | 子どもから高齢の方まで、暮らしの近くで関わりたい |
| やってみたいこと | 災害への備えなど、広い範囲の計画づくり | 教室やボランティアの活動を一緒に育てる |
どちらで働くかは、受ける試験で決まります。都道府県の試験を受けるか、市区町村の試験を受けるかを、この違いから考えてみるのもおすすめです。
行政の管理栄養士に向いている人
行政の仕事は、一人の相手とじっくり向き合う場面も、地域全体の計画を考える場面もあります。自分に合うか、チェックしてみてください。
- 地域の人の暮らしを、長い目で支えたい
- 保健師や事務の職員、ボランティアなど、いろいろな人と一緒に動ける
- 数字やデータから地域の課題を考えるのが苦にならない
- 子どもから高齢の方まで、幅広い世代と関わりたい
- 災害など、もしもの時の備えにも関わりたい
行政の管理栄養士のよくある相談
「事務職で入って欠員を待つのはあり?」「栄養教諭も公務員?」「実力認定試験のA判定は資格欄に書ける?」という相談を選びました。
相談1 市役所の事務職で入って、管理栄養士の枠を待つのはあり?
『新卒で市役所の事務職に就職して、管理栄養士の枠に欠員が出るのを待って受け直すのは現実的?』という相談です。
自治体の採用は、栄養士などの区分ごとの試験や選考で行われます。事務職で入っても、管理栄養士の仕事に移れるとは限らないので、遠回りになる可能性があります。
栄養士の区分の募集が出ている自治体を広く探して、直接受けるほうが近道です。募集は毎年あるとは限らないので、気になる自治体はいくつか並行して確かめておきましょう。
相談2 栄養教諭も、教員だから公務員?
『行政の管理栄養士は公務員試験が必要。栄養教諭も教員だから公務員だよね?』という相談です。
公立の小中学校の栄養教諭は県費負担教職員で、都道府県教育委員会の判断で配置されています。公立学校で働く栄養教諭は、教員として働く公務員の立場です。
ただ、栄養教諭は教員の免許状が必要で、行政栄養士とは仕事の中身も違います。違いは栄養教諭とは?なるには・学校栄養職員との違いで紹介しています。
相談3 栄養士実力認定試験のA判定は、履歴書の資格欄に書ける?
『市役所の管理栄養士の募集に応募する。栄養士実力認定試験でA判定だったけど、資格欄に書ける?』という相談です。
栄養士実力認定試験は、全国栄養士養成施設協会が行う認定試験で、国家資格ではありません。学生や卒業生が、自分の知識や実力を知るための試験です。
書くなら、国家資格と混ざらないように「栄養士実力認定試験 認定A」と正式な名前で書くのがおすすめです。認定Aは得点率60%以上の判定です。
相談4 高校生だけど、行政の管理栄養士になるのはどれくらい大変?
『高校生で、将来は行政の管理栄養士になりたい。どれくらい大変?』という相談です。早くから目標があるのは素敵なことですよね。
道のりは、管理栄養士養成施設の大学で学び、国家試験に合格して、自治体の試験や選考を受ける流れです。第40回(令和8年)の国家試験では、管理栄養士養成課程の新卒の合格率は79.3%でした。
自治体の募集は「若干名」「数人」といった少ない枠のことも多いので、早めに受けたい自治体の情報を集めておくと安心です。
相談5 行政の管理栄養士が、経験者として他の県で働くことはできる?
『行政の管理栄養士として働いている。経験者枠で他の県に移ることはできる?』という相談です。
経験者向けの採用を行っているかどうかは、自治体ごとに違います。年齢の条件も自治体で大きく違い、例えば大阪府の令和8年度の栄養士職は、昭和61年4月2日以降に生まれた人が対象でした。
移りたい県や市の採用ページで、栄養士の区分の募集と年齢の条件を確かめてみてください。
よくある質問
行政栄養士とはどんな人ですか?
自治体で地域の住民に対する栄養指導などに携わる管理栄養士・栄養士のことです。都道府県や保健所、市町村で働きます。
保健所の管理栄養士は何をしていますか?
特定給食施設への指導・支援、飲食店のヘルシーメニューの普及、管理栄養士・栄養士の育成、災害などへの備えなどを受け持ちます。
市町村の管理栄養士と保健所の管理栄養士はどう違いますか?
市町村は健診をもとにした栄養指導や母子・高齢の方の支援など住民に近い仕事、保健所は給食施設の指導など広い範囲の仕組みづくりが中心です。
行政栄養士は何人くらいいますか?
令和5年度末の時点で、保健所と市区町村の地域保健の仕事に関わる常勤の管理栄養士は3,929人、常勤の栄養士は304人でした。
行政の管理栄養士は栄養士の免許でもなれますか?
自治体によります。東京都のⅠ類B栄養士区分(令和7年度)は栄養士の免許で受験できましたが、管理栄養士の免許を要件にしている自治体もあります。
まとめ
- 行政栄養士とは、自治体で住民の栄養指導などに携わる管理栄養士・栄養士のこと
- 仕事の土台は、平成25年に厚生労働省が示した基本指針
- 都道府県・保健所は給食施設の指導など広い範囲、市町村は住民に近い仕事が中心
- 災害への備えや食育のネットワークづくりも大事な仕事
- なるには自治体の採用試験・選考に合格し、免許の要件は自治体ごとに確かめる
行政の管理栄養士は、地域の食と栄養を仕組みから支える仕事です。まずは働きたい地域の保健所や保健センターがどんな取り組みをしているか、自治体のページで調べてみてください。





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